2013年9月3日火曜日

棚と卓

『棚』と『卓(じょく)』
茶道具の棚には卓と棚の2種類あります。
『卓』は茶道具を床の間に飾る時に使う飾り棚です。
『棚』は畳に飾る時に使う、あるいは点前で使われる棚です。

一言で『棚』といっても、いろいろ種類があり、真・行・草によっても違います。
 

■二本柱

丸卓(まるじょく)
 丸卓(まるじょく)は、天板、地板ともに丸い、二本柱の小棚です。
丸卓は、中国から伝えられた飾り棚である「卓」を棚物として応用した棚の一種で、炉・風炉いずれの場合も使用されます。

丸卓は、利休好み、宗旦好みがあります。
利休好みの丸卓は、桐木地で、二本の柱が天板と地板の内側に付き、地板の裏には低い三つの足がついています。
宗旦好みの丸卓は、黒の一閑張片木目で、二本の柱は天板と地板の外側に付き、地板が厚く、足はついていません。



杉棚(すぎだな)
杉棚(すぎだな)は、薩摩杉の木地の二重棚で、天板と地板は方形、中棚が前後に動き、客付と勝手付が脇板で、脇板上部に大きな香狭間透し、勝手付に竹釘があり、下部が糸巻状に刳ってある小棚です。
杉棚は、裏千家十一世 玄々斎(げんげんさい)精中宗室(せいちゅうそうしつ)が好んだ棚です。
杉棚は、玄々棚ともいい、玄々斎が田安家の御蔵調べのとき、蔵にあった不用の薩摩杉の長持を活かしこの棚に造りかえたといいます。
杉棚は、炉と風炉ともに用います。
2014年4月22日 続き薄茶





渚棚(なぎさだな)
渚棚(なぎさだな)は、桐木地で勝手付の側板を蛤形に刳って天板とし、客付に白竹一本柱を立て上部の切込みに天板を差し込み、地板は長方形で客付向うを斜めに切り落してある小棚です。

渚棚は、淡々斎(たんたんさい)の斎号で知られる、裏千家十四世 無限斎(むげんさい)碩叟宗室(せきそうそうしつ)が好んだ棚です。

渚棚は、裏千家の利休堂にある仙叟好みの釣棚「蛤棚」を置棚として好んだものです。

渚棚は、炉・風炉ともに用います。


■三本柱

五行棚(ごぎょうだな)
 五行棚(ごぎょうだな)は、焼杉の木目洗出し、天板と地板は方形で端喰(はしばみ)入り、白竹の三本柱で、竹柱を客柱二節、勝手柱三節、向柱一節に立てた小棚です。

五行棚は、裏千家十一世 玄々斎(げんげんさい)精中宗室(せいちゅうそうしつ)が好んだ棚です。

五行棚は、中置用の風炉を置く棚で、水指は置きません。

五行棚は、陰陽五行説にちなみ、天板、地板(乾、坤)の間に木火土金水を入れることからこの名があります。

五行棚は、木(棚あるいは杓)火(炭火)土(土風炉、灰)金(釜、風炉)水(湯)を表すということから、土風炉をのせる約束となっています。




徒然棚(つれづれだな)(業平棚ともいう)

徒然棚(つれづれだな)は、桐地春慶塗と桑木地の二種があり、菱形で三本柱の二重棚で、天板の下が二枚引の袋棚で、二枚の戸には磯馴松の絵が描かれ、菖蒲皮紐の引手が付き、袋棚の下に、客付に一段、勝手付に二段の業平菱の透しのある腰板が付いた小棚です。
徒然棚は、淡々斎(たんたんさい)の斎号で知られる、裏千家十四世 無限斎(むげんさい)碩叟宗室(せきそうそうしつ)が好んだ棚です。
徒然棚は、「業平棚」(なりひらだな)ともいいます。
徒然棚は、炉に用いられます。

蛤卓(はまぐりじょく)
蛤卓(はまぐりじょく)は、桐木地根杢の蛤形の天板と地板に、白竹の三本柱で、竹柱を客柱一節、勝手柱二節、向柱三節に立てた小棚です。
蛤卓は、淡々斎(たんたんさい)の斎号で知られる、裏千家十四世 無限斎(むげんさい)碩叟宗室(せきそうそうしつ)が好んだ棚です。
蛤卓は、棚板に根杢(ねもく)を使い、その木目を蛤の貝殻の甲の縞目に見立てたところからこの名があります。
蛤卓は、裏千家の利休堂に仕付けられた、裏千家四世 仙叟好みの釣棚「蛤棚」をもとに好んだものです。
蛤卓は、炉・風炉ともに用いられます。






平生棚(へいせいだな)

平生棚(へいせいだな)は、溜塗の三本柱の二重棚で、天板が円形、中板が三角形、地板が方形の小棚です。

平生棚は、裏千家十六世 坐忘斎(ざぼうさい)玄黙宗室(げんもくそうしつ)が好んだ棚です。

平生棚は、炉・風炉ともに用います。

柄杓は、伏せて入り飾りにします。




■四本柱

寒雲卓(かんうんじょく)
 寒雲卓(かんうんじょく)は、寒雲棚を半分に縮めたもので、赤杉木地、赤松皮付丸太の四本柱の二重棚、取り外しのできるやや幅の狭い中板を左右の棚桟に渡し、地板がなく畳摺(たたみずり)が三方に付いた小棚です。

水指はお運びで。素焼きのものを。

寒雲卓は、裏千家十三世 圓能斎(えんのうさい)鉄中宗室(てっちゅうそうしつ)が好んだ棚です。






四方卓(よほうじょく)
 四方卓(よほうじょく)は、赤杉木地の四本柱で、腰の三方に竹の横桟を入れ、向うには竹の桟から地板に腰板を嵌め込み、地板の下の四隅に足が付いた小棚です。

四方卓は、裏千家十二世 又玅斎(ゆうみょうさい)直叟宗室(じきそうそうしつ)が好んだ棚です。








更好棚(こうこうだな)玄々斎好み

更好(こうこうだな)は、桐材で黒掻合塗爪紅の二重棚で、天板・中棚・地板ともに一尺四方、中板・地板は端喰(はしばみ)入りで、地板の底の四隅に小さな雲形の足のある小棚です。

更好棚は、裏千家十一世 玄々斎(げんげんさい)が好んだ棚です。
更好棚は、利休好みの三重棚を元に作られた棚で、天板と下の柱を取って二重棚として好みなおした(更に好んだ)というところからこの名があります。

更好棚は、炉と風炉ともに用い、水を次ぐ時は水指をおろします。





紹鴎棚(じょうおうだな)
武野紹鴎の好みと伝える、炉専用の大きな棚。
檜材の春慶塗で、下に2枚引きの襖のある地袋がつき、その上に4本柱で天板がのる。 


天板には、板文庫か香炉か一輪挿し。
その下には棗。
右側の襖には、平水指を置く。

薄茶の場合は、襖を閉めておくが、
濃茶の場合は、初めから開けて、水指を前に出しておく。

薄茶の場合、拝見の時に左側の襖の中に「入飾り」。


最後は、「人飾り」にして、襖を閉める。











秋泉棚(しゅうせんだな)

秋泉棚(しゅうせんだな)は、檜地紅溜塗の二重棚で、中棚が流水形で、客付と勝手付に、上段に二葉、下段に一葉の計大小三葉の楓の透しのある横板が付いた小棚です。
秋泉棚は、淡々斎(たんたんさい)の斎号で知られる、裏千家十四世 無限斎(むげんさい)碩叟宗室(せきそうそうしつ)が好んだ棚です。
秋泉棚は、東京の大宮御所内に貞明皇后(大正天皇夫人)のために建てられた茶室「秋泉亭」の用具として、紹鴎水指棚をもとに、昭和六年の秋に好んだものです。本歌は宗哲作で、秋泉亭の余材をもって作られたといいます。
秋泉棚は、炉・風炉ともに用いられます。

八千代棚(やちよだな)
八千代棚(やちよだな)は、桐材紅溜塗の四方箱で、倹飩(けんどん)の前戸は鳥の子張りに金砂子が霞に撒いてあり、縁は桐木地、銀の七宝座の摘みが付き、箱の両側の上部に七宝透しがある箪笥です。

八千代棚は、淡々斎(たんたんさい)の斎号で知られる、裏千家十四世 無限斎(むげんさい)碩叟宗室(せきそうそうしつ)が好んだ棚です。

八千代棚は、利休好みの旅箪笥をもとにして好まれたものです。
八千代棚は、本歌には淡々斎の嘉代子夫人の筆で『古今和歌集』の「我が君は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで」の小色紙が張ってあることろからこの名があります。

八千代棚は、七宝透しの内側に桐木地の板が嵌っていて、これを引き出して芝点を行う場合に用いることもします。
八千代棚は、炉・風炉ともに用います。 

吉野棚(よしのだな)

圓能斎好
吉野太夫が好んだ二畳の席の吉野窓から意匠された小棚。
四本柱には吉野丸太のごく細いものを面皮付で用い、
客付は円窓を袴抜き、
勝手付は冬は障子、夏は葭をはめる。
勝手柱に竹釘が打ってある。








桑小卓(くわこじょく)

桑小卓は、天板は面を丸くとった唐戸面(からどめん)を施し、地板は木口を矢羽の後の部分のような矢筈(やはず)に取ってあります。
桑小卓は、裏千家四世 仙叟宗室(せんそうそうしつ)が、床に用いるために好んだもので、上に青磁袴腰香爐(せいじはかまごしこうろう)、下に瓢(ふくべ)の細口花生(ほそくちはないけ)を取合せたといいます。
桑小卓は、表千家七世 如心斎(じょしんさい)天然宗左(てんねんそうさ)が、点前用に用い始めたといいます。

【始め】
茶碗を勝手付きに割り付けて、
棗を取る前に、建水を両手で取り出しいつもの位置に置く。
棗を下ろし茶碗を3手で置き合わせる。
柄杓を左手を添えて右手で取り、構えて、右手で蓋置を取って、柄杓を蓋置に置く。
建水を進めて居住まいを正す。

【拝見を請われた後】
柄杓を構えずに棚の柱に立て掛け、蓋置を中板の左端に置く。
 茶碗を勝手付に置き、棗と茶杓を拝見に出す。
一膝、下座を向いて、建水を持って帰る。
 茶碗を持って帰り、水次(四本柱なので水指を畳に置く)。
清めた建水を持って入り、棚の正面に座る。膝前に置き、蓋置を扱って、建水の中に入れ、両手で建水を地板にしまう(ちょっとはみ出す)。
 拝見。
 


玉椿七宝棚








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